「そもそもトレーナーになるつもりはなかったんです」
早稲田の路地裏あるマンションを地下へと潜ると、そこには一見するとカフェのような空間が広がっていた。ハワイを想起させる爽やかでフランクな空気感。天井は高く開放感に満ちている。至るところにサーフボードが飾られており、色とりどりのプロレスのマスクも並んでいる。壁には大きなロゴマーク——SAWAKI GYMのシンボルである“太陽のもとで腹筋をする姿”が描かれている。
ここSAWAKI GYMは澤木一貴という男の“自由さ”が溢れている。トレーナー歴34年の大ベテラン。トレーニング器具が並ぶフロアには、気取らないフレンドリーな雰囲気が漂う。
「ここでオールナイトの忘年会もやるんですよ」
澤木は柔らかい笑みを溢す。ジムには総勢20人近いスタッフが在籍している。パワーリフターもいればリハビリを得意とする者もいる。キャラクターもバラバラだ。だがそこには不思議な統一感もある。澤木を中心とした“自由な空気感“に共鳴しているからだろう。
そんなベテラントレーナーはどんなキャリアを歩んできたのだろうか。
「そもそもトレーナーになるつもりはなかったんです」
高校時代の体重はわずか48キロで自ら“体力弱者”だったと語る。そんな彼がトレーナーとして確固たる地位を築くようになるまでには知られざる物語があった。
点と点が結びついて線になったとき、過去は今へと繋がるストーリーになる。さあ、奇想天外な澤木ワールドへ、ようこそ——。