「トレーナーは社会的意義のある仕事です」
『メメント・モリ』という言葉をご存知だろうか。ラテン語由来のこの言葉は「死を忘れるな」という意味で、自分の身がいずれは失われることへの戒めであると同時に、死を意識することによって、限られた生を大切にせよという今を生きることへの肯定的な警句でもあるーー。
“日本体育大学の筋肉博士”と聞けば誰もがピンとくるはずだ。漆黒のジャケットの上からでも目立つ広い肩幅は、男がスポーツ医学・スポーツ科学の研究者として第一人者でありながら、ボディビルダーという実践者でもある証拠だ。
スポーツ医科学の世界で異彩を放ち続ける男——岡田隆。
日々研究に明け暮れながらも、自らの肉体を研究材料として鍛え上げる。岡田の学問と実践の往復は日々続いている。まさに文武両道を具現化したような男だ。
「トレーナーは社会的意義のある仕事です」
そう語る岡田の口ぶりには知の厳密さと実践者としての矜持が混じり合う。机の上だけでは導き出せない感覚の正体を突き詰めるために、彼にとって学びの場は大学の研究室を越えてジムのフリーウェイトエリアに及ぶ。
論文の執筆にもスクワットにも等しく向き合っている。
岡田の研究するスポーツ科学はアスリートの未来を左右するだけではなく、今やスポーツの枠組みすらも飛び越えて、社会的課題を解決へと導く重要なキーとなっている。
スポーツ科学の最前線に立つ岡田隆の思考と実践。フィットネス業界の現状と向き合い続ける男から語られたのは、“ある出来事”をきっかけに変わった“人生観”についてだった。