「わたしはなんでも時代より少しだけ早いって言われるんです」
“フィットネスライフコーディネーター”という言葉を聞いたことがあるだろうか。
単に筋肉を鍛えるだけの時代はもう閉幕した。提唱したのは女性トレーナーの先駆け的存在である小倉シエカ。生活すべてを整えて、日常のなかに自然にフィットネスを溶け込ませていくという発想だ。トレーニングは“イベント”ではなく“ライフスタイル”なのだ。しかし彼女がその理念を打ち出した当時、まだ時代に少し早すぎた。なかなかこの言葉は浸透しなかったと語る。
「わたしはなんでも時代より少しだけ早いって言われるんです」
生活を変える。思考を変える。そのうえで体を変える。そんな全体最適のアプローチは今でこそ広く知れ渡るべき考え方だろう。
シエカの考えはつねに時代を先駆ける。たとえば“フィットネスモデル”という言葉を日本で初めて公言したのも彼女だ。
まだ“筋肉美”が女性にとって疑問視される風潮が色濃かった時代から、つねに“女性が美しく筋肉をつけること”の価値を、体現者として、そして伝道者として広めてきた。今まさに時代が彼女に追いついて来たのかもしれない。
シエカは自らの半生を振り返って、こう語る。
「いつも誰かが差し伸べてくれる、救いの手があったんです」
彼女の半生を紐解けば、いくつかの“救いの手”があった。