「怖さ?ないよ。怖さなんて、ない」
静岡県藤枝市――。
全国津々浦々のトレーニーならば、その名を耳にした瞬間にふと背筋を伸ばしてしまうだろう。一般的に温暖な気候と茶畑で知られる藤枝市。だがフィットネスの世界に生きる者にとって、この土地は特別な意味を持っている。
藤枝市にあるマッスルハウスジムは、トレーニーにとってひとつの“聖地”だ。ただのトレーニング施設ではない。そこは狂気と執念が交錯する場所。己の限界はどこにあるのか?そんな問いに肉体で答えを出そうとする者たちが日々集っている。
このジムの主宰が合戸孝二である。
ボディビル界では知らぬ者のいない存在。ミスター日本を4度制した男。
観る者の目を奪う圧倒的な筋肉量と絞り。鬼気迫る表情で己の身体を追い込み続ける過酷なトレーニング。男を象徴する数々の異次元なエピソード。
いつしか彼はこう呼ばれるようになる。“狂気の男”とーー。
常人離れしたトレーニングの原動力はどこにあるのだろうか。
根性か?努力か?信念か?もちろんいずれも不正解ではないが本質的ではない。
合戸の口から自然と溢れてくるトレーニングの原動力は、もっと原始的で、もっと強い力を持っている、“たったひとつの感情”だった。
微笑みの裏に潜む狂気。その奥底にはなにが眠っているのか。